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インドでのビジネスパートナー、AMITが暮らす家を訪ねて

インドでのビジネスパートナー、AMITが暮らす家を訪ねて

昨年から展開が始まったPasand Life Style。洋服だけではなく、人生の多くの時間を過ごす自宅をどう彩り、どう暮らすのか。それはMAMI、MASARU夫妻にとっても、インドでのビジネスパートナーAMITにとっても大きな関心ごとであり、ともに刺激し合いながら感性をアップデートしているテーマでもあります。今回はそんなAMITのこだわりが詰まった自宅を紹介していきます。


幼い頃の記憶から生まれたモダンな建築

デリー首都圏にある高級住宅街。木々が生い茂る閑静な通りに、Pasandの重要なビジネスパートナーであるAMITの自宅がある。ブリック、コンクリート、大きく開放的な窓ガラスで構成されたモダンな建物は、彼が幼い頃に家族で旅行に訪れ、大人になってからも折に触れて足を運ぶチャンディーガルに影響を受けているという。

チャンディーガルは1950年代に建築家のル・コルビジェが中心となって設計した計画都市で、今でも現存するコルビジェ建築や庭園、ギャラリーも多く、アート・デザイン好きな人にとって魅力的な観光都市として人を集めている。

自宅の建築を依頼したニューデリーのアーキテクチャースタジオ、Studio Organonと実現したブリックとコンクリートの組み合わせは、チャンディーガルのThe Goverment Museum & Art Galleryとも共通していて、広く大きな窓で建物と外の世界が繋がる構造もその影響を感じさせる。


古物と現代のクラフトが融合する空間

外階段をのぼって部屋に入ると広がるのがリビングルーム。この家全体に言えるのは、古いものと新しいもの、インド由来のものと世界各地から集めてきたもの、異なる要素がちょうどいいバランスで設られていること。写真正面に見えるのは、チャンディーガルにも関わっていたピエール・ジャンヌレのチェアと、ジャイプールの家具メーカーGUILMOHAR LANEでオーダーメイドをしたソファ。

そしてソファ脇に置かれているのは、AMITが「どれもお気に入りだけど、いま一番を選べと言われたらこれかな」と教えてくれたスモールバーにもなる古いキャビネット。おそらく1700年代のものというアイテムが空間に自然に馴染んでいる。

「典型的なインドの家とは言えないけれど、そこかしこにインドらしさを散りばめています」というように、ダイニングにはインド産のグリーンマーブルを使ったテーブルや、アーティストの絵が。躯体にも使われているブリックはジャイプールがあるラジャスターン州の職人が手で積み、木材はインド北東部のチーク材を使っている。

ダイニングチェアはボンベイのSADAYA GUILDにオーダーメイドしたもの。Pasandスタッフが訪れるたびにインド料理を振る舞ってくれるダイニングテーブルには、Pasand Life Styleのテーブルクロスが敷かれていた。


時間の経過とともに表情を変えるマテリアル

毎日のように30℃を超えるインドで、「暑くならずにすべての部屋に光が回るように」と建物の中央部には吹き抜けが。この空間があることによって、刻一刻と部屋のライトが変わり、それぞれの家具も時間ごとに様々な表情を見せてくれる。

床材もこの家の見どころ。白いセメントに、インドで採れるカラフルな色の石を砕いて混ぜた素材でできていて、Pasand青山店のカウンターも同じ手法で作られている。

AMITの家には日本のお面や絵画が要所要所に配置されている。日本文化の好きなところを聞くと、京都の伏見稲荷の千本鳥居の絵の前で、「日本にはWABI-SABIという思想がありますよね。完璧じゃない部分、欠落している部分に美しさを見出す考え方がとても好きなんです」と。


ファクトリーも自宅も
手仕事へのリスペクトが溢れる

最も低い階に位置するグラウンドフロアは主にゲストルームとして利用。キッチンも備え付けられていて、写真の向かって右側にある大きな窓からは柔らかい自然光が注ぐ。生活道具が最低限に抑えられている分、インドのチーク、ブリック、コンクリートの素材が引き立ち、名作家具と現代作家のアートが落ち着いたバランスで溶け合っている。

AMITが手がける服と同様に、職人の手仕事が生かされた家でPasandとのこれからの取り組みについても語ってくれた。

「MAMI、MASARUとのビジネスで私がやるべきことは、これまでも、これからも“服を作る”ことだと思っています。より良いモノを作るために労働条件を整えて優秀な職人を確保すること、安定してクオリティの高い洋服を出荷するためのシステムを整えること。日本人にとっては当たり前のことでも、インドでそれを継続していくことは簡単ではありません。Pasandも私のブランドであるITOHも成長させていきたい。だからこそまずは、“服を作る”ことにフォーカスをしていきたいと考えています」

それに応えるようにMAMIも「AMITは私たちにとって不可欠な存在」と話す。

「私たちの業態も卸主体から小売主体へと変化してきました。直接お客さまに商品の魅力を伝えて、その評価を受け取ることができている。インドで生産している洋服の刺しゅうひとつを取っても、クオリティはとても高いと感じています。この家を作るのに3年以上かけたことからも分かるように、AMITは理想を達成するためには努力を惜しまない人間。だからこそPasandのスタッフも店舗で、WEBで、SNSでインドの手仕事の魅力を伝えられています。一度高い品質を実現しても、それを維持することはとても難しい。細部にこだわり続けない限り不可能だからです。だけどAMITは決して妥協をしない。これからも私たちのモノ作りにAMITは欠かせない存在だと確信しています」

-アーカイブマガジンはこちらから-
インドとPasandの物語 Vol.1 –20年続くパートナーシップの萌芽–
インドとPasandの物語 Vol.2 –現場主義が生んだ信頼関係–

photography: Akemi Kurosaka
text: Pierre la Roche

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