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Technic Vol.20 Cifre Embroidery/シフリー刺しゅう

Technic Vol.20 Cifre Embroidery/シフリー刺しゅう

チカン刺しゅうブロックプリントという、これまでマガジンで紹介してきたテクニックのほとんどは、多くの人が思い描く“インド”然とした雰囲気を持った伝統技術でした。一方で今回取り上げる「シフリー刺しゅう」は、17世紀後半以降のフランスで、貴族や上流階級の人たちが身につけるアイテムとして広まった技術でもあります。いつもより少しエレガントな洋服を生み出す工場を訪れました。


752個の針が一気に動く巨大マシンが稼働

現在Pasandが取り扱うシフリー刺しゅうは、主にマシンを使って刺しゅうされている。以前紹介したデジタルプリント同様に、デザインをコンピュータ上で準備する。これからどこの部分を刺しゅうするのか、その都度目視で確認。

シフリー機と呼ばれる専用の巨大なマシーンで、生地に穴を開けながらその周囲を縫っていく。ちなみにこのマシンはドイツ製で、752個の針が一気に動いて生地に穴を開けては縫い、穴を開けては縫い、と繰り返していく。それだけの針が一気に動くので、いくつかの箇所では綻びが生じるが、なぜか担当の技術者は綻びが発生する場所が事前にわかっていたかのように素早く動き、手で微調整して正しい動きへと修正していく。


独特の立体感と軽やかさがエレガントな印象を生む

フランスでは主に貴族や上流階級のあいだで流行したのに対して、インドではサリーやクルタなどに用いられることが多く、当初はムガル帝国の王侯貴族のあいだで広まったものの、一般の家庭でも早い段階から着用されてきたという。この技術によって生まれる独特の立体感はエレガントな印象をそのアイテムに与え、他のテクニックでは表現できない高級感を生み出している。


職人が介在するからこそ守られる品質がある

マシンで一気に縫い終えると、仕上がりをチェックするセクションに生地が送られる。生地の下から光を当てて、細かく人間の目でミスがないか確認し、綻びを見つけるとステッカーを貼りつける。なぜか同じ工場内にも関わらず、ミスした箇所にステッカーを貼らずに糸で該当箇所を結く人も。聞いてみると「次の人に伝われば大丈夫(笑)」なんだそう。

最後の仕上げはやはり職人の手で。一箇所ずつ刺しゅう枠で固定して、ミシンで整えていく。工場に入った瞬間に巨大なマシーンを目にしたことで、この技術は機械化されているのかと早とちりをしかけたものの、クオリティコントロールをしているのは職人の「目」と「手」であることを実感する経験となった。

photography: Akemi Kurosaka
text: Pierre la Roche

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