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Technic Vol.17 Chikan Embroidery/チカン刺しゅう

Technic Vol.17 Chikan Embroidery/チカン刺しゅう

古くから刺しゅう文化が盛んなインドにあって、最も代表的なテクニックのひとつとされているのがチカン刺しゅうです。北インドのウッタルプラデーシュ州ラクナウ地方で、16世紀ごろに発祥したと言われるこのテクニックは、その地で暮らす女性たちを中心に代々受け継がれてきました。当初はこの地域を支配した帝国における装飾品や贈り物として重宝されたこの技術が、現代の洋服にどのように生かされているのでしょうか。


貴族に愛された贅沢なあしらい

ムガル帝国の発展とともに栄えたチカン刺しゅうは、王侯貴族が好んで着用したこともあって純白のモスリン生地に白い刺しゅうを施すという、極めて贅沢な方法として当初は広まりをみせた。現代では、優美な印象はそのままに、白だけでなくさまざまな色の生地に豊富な選択肢の糸で繊細なデザインを縫い込んでいく技術として定着している。

東京のオフィスから届いたデザイン通りに穴をあけたトレーシングペーパーに、ジェムパウダーを染み込ませた布を塗りこんでいく。次第に生地自体にブルーの模様が浮かび上がり、職人が縫っていくガイドラインが立ち上がる。


500年変わらない技術をPasandで体感する

写真で見えている右手と、生地の下で針を待ち受けている左手が澱みなく動き続け、見る見るうちに白い生地には優雅な立体感が生まれる。

この技術の一番の見せ場といってもいいのが、ふんわりとまるで空気を含んだかのような刺しゅう。職人が縫い進める様子を見ていると、昔から高温多湿だったインド北部において、通気性の良さと優雅なデザインを両立するチカン刺しゅうが人気を獲得したのはごく自然なことのように感じられる。

デザインにもよるとは言うものの、ひとつのアイテムを縫いあげるのに約20時間。1日7時間縫い続けたとして3日かかる計算になる。チカン刺しゅうが施されたPasandのドレスを着ることは、約500年にわたって進化を遂げながら、職人がひと針ずつ手で縫うという根幹は揺らぐことのない歴史を肌で感じることでもある。

今年も暑くなるであろう夏に備えて、今から着られるドレスをひとつ手に入れたい。

photography: Akemi Kurosaka
text: Pierre la Roche

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